リレー小説

白いサソリ(2)

村瀬は思わず地面にかがみこみ、白いサソリのマークを見つめずにはおれなかった。傘がぶれてスーツが濡れることも忘れた。 サソリは左向きで、手のひらくらいのサイズだ。本物よりもやや大きめのハサミを持ち、振り上げた尻尾の毒針はまがまがしい曲線で描か…

白いサソリ(1)

村瀬が最初にサソリを見たのは、桜の花が雨に散らされる夜のことだった。 サソリは街灯の光に照らされ、白く浮き上がっていた。 雨で濡れていたこともあったのだろう、普段だったらアスファルトに溶け込んでいて見えなかったかもしれない。村瀬がそれに気づ…